~約7割が健康保持・増進をサポートできていないと回答~
コロナ禍を経て、働き方は大きく変化しました。フレックスタイム制やテレワークなど、柔軟な働き方の実施状況とウェルビーイング実感値の関係、健康で働き続けることに対する意識、さらに、企業が女性の健康保持・増進に向けたサポート制度や取り組みを実施できているかについてなど、HER-SELF女性の健康プロジェクト®は、2020年11月に、20歳~65歳の有職女性1,000人と、20歳~65歳の現職で人事部担当の男女400人を対象に、「働く女性のウェルビーイング」および健康経営における「人事担当者の”女性の健康”への意識」を調査しました。
有職女性の4割は年齢を重ねても長期的に働き続けられるかどうかに不安を抱いている一方で、企業の人事担当者の7割弱が、健康保持・増進をサポートできていないと回答し、企業のさらなる対応が求められると言えそうです。
※ウェルビーイングとは、肉体的にも、精神(メンタルヘルス)的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることを指します。
※下記原文ママ。
■調査結果サマリ―
<人事担当者への調査>
1.人事担当者の約7割が女性従業員に対して女性の健康保持・増進をサポートできていないと回答。
2.「検診や受診のための有給休暇制度」は大企業においても4割程度の企業でしか実施できていないことが明らかに。
3.6割の人事担当者が女性従業員から自身の健康課題に関して相談を受けたことがないと回答。
■調査結果
1. 人事担当者の約7割が女性従業員に対して女性の健康保持・増進をポートできていないと回答
「お勤め先の職場では、女性従業員に対して女性の健康保持・増進に向けたサポート制度や取り組みを実施していますか。」と質問したところ、65.8%(実施したいが着手できていない13.3%、全く実施できていない17.0%、把握していない・わからない35.3%)が実施できていないと回答しました。
2. 「検診や受診のための有給休暇制度」は大企業においても4割程度の企業でしか実施できていないことが明らかに
「お勤め先の職場では、女性従業員に対して女性の健康保持・増進に向けたサポート制度や取り組みを実施していますか。」と質問したところ、3割(積極的に実施している10.3%、多少は実施している24.0%)が実施していると回答しました。
実施していると回答した3割の人に「お勤め先の職場で、女性従業員に向けた健康保持・増進のサポート制度や取り組みのうち、実施しているものをお答えください」と質問したところ、有職女性から最もニーズが高かった※4「検診や受診のための有給休暇制度」については、1,001名以上の大企業であっても42.0%の実施状況であることがわかり、有職女性の希望と企業の実施状況に乖離があることが伺えます。
3. 6割の人事担当者が女性従業員から自身の健康課題に関して相談を受けたことがないと回答
「あなたが、お勤め先の職場で、女性従業員から自身の健康課題関して相談を受けたことがある内容をお答えください」と質問したところ、6割(59.5%)の人事担当者が、「相談を受けたことがない」と回答しました。
一方、相談の内容の中で「健康を理由とした配置転換(9.3%)」「健康を理由とした勤務形態変更(9.0%)」「健康を理由とした業務負荷軽減(8.3%)」など、勤務形態に関する相談も一定数あることがわかり、それぞれの健康状態に合わせた働き方を実現することで、健康で長く働くことができる人が増える可能性が示唆されます。
■清水なほみ先生コメント
■清水なほみ / 産婦人科医
ポートサイド女性総合クリニック ビバリータ 院長
NPO法人女性医療ネットワーク理事
通常の婦人科診療のみならず、最新の脳科学×心理学×医学を統合的に駆使した診療を行う婦人科医。中学時代のいじめや研修医時代のうつ経験から、「病は気から」を科学的に解明するための研鑽を積む。何気ない会話の中で患者に気付きを与え、片頭痛やイライラをあっさり「忘れさせる」診療には定評がある。
生産性を上げるためには、どのようにしてこのウェルビーイングを上げていくかが大きな課題であるという「認識」を持つことが第一歩となるでしょう。就労している女性の健康管理を考える上では、本人のライフステージとホルモンステージ別にどのようなトラブルが起こりうるのかを把握しておくことが重要です。
<年代別に起こりうる健康問題>
20代~30代前半 :月経痛・PMSなどの月経関連症状および子宮頸がん
30代後半~40代前半 :筋腫や子宮腺筋症による過多月経・不妊症・子宮頸がんや乳がん
40代後半~50代 :周閉経期の月経不順や更年期障害・子宮体がんや乳がん
<ライフステージ別に起こりうる健康問題>
妊娠中 :つわり・切迫流産や切迫早産・腰痛・頭痛・精神的不安定さなど
産後 :排尿障害・腰痛・うつ状態など
育児期や介護期 :心身の疲労などに注意
女性特有の健康トラブルは、上記のように多岐にわたります。月経困難症を放置するだけでも、症状によるパフォーマンスの低下や急な休職などによる労働損失は決して無視できる規模ではありません。ぜひ一人ひとりが検討していただきたい課題です。相談役としての中間的職務に女性を配置したり、オンラインで専門家に健康相談できるシステムを導入したりするなど、まずは、「何があるとよりよくなるのか」について当事者からの意見に耳をかたむけてみてはいかがでしょうか。
最後に、就労する側の意識として必要なことは、「何となくの不調を放置しない」ことです。寝込むほど月経痛がひどかったり、月経前に集中力が低下してミスばかりしてしまったり、いつも通りに過ごせていないと感じる症状があれば、早めに婦人科や女性内科を受診して専門家のアドバイスを受けるようにしてください。自分で日々できる健康維持を行いつつ、適切なタイミングで専門家の力をうまく活用していきましょう。